DSCで潜熱プロファイルに温度幅が生じるのはなぜか?

DSCで比熱容量を測定すると,相変化時の潜熱プロファイルには温度幅が生じますが,相変化中は物質温度が変化しないことと矛盾を感じます。DSCの横軸温度は,参照試料の温度であって,測定対象の温度はやはり変化しないのでしょうか?

はじめに前提として下記をご理解ください:測定対象である試料には有限の大きさがあるので,試料内や実験系内に温度分布が発生することは避けられません.また,DSCで定量的測定を行うための条件として「試料の外で温度測定を行う」というのがあります(長くなるので説明しません).

このため,DSC装置が示す温度は(本当は)試料の温度ではありません.(ただし,較正の段階で,ピーク開始時点あるいはピークの頂点時点の温度を基準物質の相転移温度に「合わせる」ことを行うのが普通です.)

詳しくは,

  • 齋藤・森川「分析化学実技シリーズ 熱分析」
    (日本分析化学会編,共立出版,2012,東京)

をご参照ください.

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