熱測定スプリングスクール2017(第78回熱測定講習会)

~熱測定の基礎と高分子材料・医薬品・食品・化粧品分析への応用~

日時:2017年3月8日(水)~10日(金)(10日はサンプル持込測定希望者のみ)
会場:早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区大久保3-4-1)

受付・講義(8、9日): 55号館N棟1階第二会議室
実習・サンプル測定(9、10日): 56号館4階403室
 本講習会では、熱測定に関する基礎講義と、高分子材料および医薬品・食品・化粧品分析に関する講義、実習、個別相談を行います。今回は新しい試みとして、参加者の持参サンプルについて、メーカー担当者とマンツーマンで相談しながら測定を行う時間を設けます。熱測定をこれから始めようとしている初心者はもちろん、既に研究・開発で熱分析を利用しているものの疑問を抱えている方々、およびDSC等の従来装置では問題が解決せず、新しい分析手法を模索している方々などの参加をお待ちしております。

会場世話人:山崎淳司(早稲田大)
日本熱測定学会 企画幹事:川上亘作(物材機構)、辰巳創一(京都工繊大)、岩間世界(明治学院大)、古島圭智(東レリサーチセンター)

終了しました。多数のご参加ありがとうございました。

プログラム

3月8日(水) 講義 (55号館N棟1階第二会議室)
10:00~10:05 はじめに  物材機構 川上亘作
10:05~10:50 熱分析の基礎と測定・解析ノウハウ  京都工芸繊維大 辻井哲也
 熱分析で最も使用されている示差走査熱量計(DSC)を中心に、原理と構造をやさしく説明する。さらに測定における問題と対策、分析結果から得られる情報を整理し、すぐに活用できる測定・解析ノウハウを紹介する。
10:50~11:35 高分子の基礎と熱分析による評価  首都大学東京 吉田博久
 高分子は分子鎖が長いため、分子量、コンフィグレーション、コンホメーションに分布を持つ。この分布と長い分子が原因で、結晶性高分子であっても準安定な結晶と非晶が共存し、融点は熱履歴に依存する。融点の熱履歴依存性は、結晶化速度が遅いことが関係する。遅い結晶化速度は非晶の形成にも関係し、ガラス転移温度が影響を受ける。講義では、これらの互いに関係しあう融解、結晶化、ガラス転移について学ぶ。
11:35~12:20 医薬品の熱分析 日局熱分析法の解説と製剤開発への応用  星薬科大 米持悦生
 日局一般試験法に収載されている熱分析法は、医薬品原薬の物理化学的特性の評価等において汎用されている手法である。講義では、熱分析法の解説、さらに、TGA, DSCおよびマイクロカロリメータを用いた原薬物性評価、製剤設計への活用事例について紹介する。
12:20~13:20 昼食
13:20~14:05 熱分析を駆使した結晶多形の評価  物材機構 川上亘作
 近年の医薬品候補化合物には、必ず結晶多形が存在すると言っても過言ではない。そして医薬品開発において結晶形の制御は必須であるが、各結晶形のキャラクタリゼーション、結晶多形の熱力学的関係および転移挙動の把握等に対して、熱分析は最も強力な評価手段である。本講義では結晶多形の基本的な説明に始まり、熱分析で結晶多形がどのように評価できるのか、さらに測定条件をどのように工夫すれば結晶多形に関する突っ込んだ情報が得られるか等を解説する。
14:05~14:50 低分子創薬研究における熱測定とサーマルシフトの活用  東京大 長門石 曉
 低分子創薬において、膨大な数の低分子化合物ライブラリーから特異性を有した質のあるヒット化合物を得ることは、Hit to Leadや合成展開へと進む上で重要な位置づけにある。本講演では、低分子創薬における熱力学パラメータや熱安定性の重要性を概説し、実際の低分子スクリーニングにおける熱測定(ITC、DSC)とサーマルシフトを活用したヒット化合物取得の例を紹介する。
15:00~15:45 バイオ医薬品の安定性評価と製剤開発  大阪大 内山進
 バイオ医薬品において蛋白質の安定性評価は精製や保存中の凝集などの劣化の予測や安定な製剤開発に必要である。本講義では、バイオ医薬品に焦点を絞り、安定性評価と安定な製剤開発のための、熱力学的基礎、測定原理および方法、さらには結果の解釈について説明する。
15:45~16:30 食品ゲルの熱分析  東海大 飯島美夏
 日本では古くから多糖ゲルを食しているが、近年では食品以外でも利用が広がっている。主に食品に使用されている多糖ゲルの種類について主に熱的視点から分類し、熱分析で測定可能な現象と評価法について解説する。
16:35~17:20 化粧品開発における熱分析  資生堂 岡本亨
 化粧品に汎用されているO/Wクリームの物性と製剤開発を中心に化粧品開発における熱分析の活用について解説する。また、スキンケアの視点から角層細胞間脂質の熱分析についても紹介する。
17:30~18:30 グループディスカッション・個別相談  講師全員
3月9日(木) メーカー講義(55号館N棟1階第二会議室)・実習(56号館4階403室)
9:00~9:20 各熱分析手法による高分子材料・電子材料への応用例  島津製作所 太田 充
9:20~9:40 ためになるDSC、TG測定のコツと試料観察熱分析の活用事例  日立ハイテクサイエンス 高橋秀裕
9:40~10:00 現場での熱測定とその解析-熱分析を有効活用するためにー  パーキンエルマージャパン 鈴木俊之
10:10~10:30 熱分析におけるデータベース活用の試み  ネッチ・ジャパン 塚本 修
10:30~10:50 XRD-DSCと試料観察TG-DTAでわかる試料の状態変化  リガク 益田泰明
10:50~11:10 革新的技術の超高速DSC、FlashDSC1の装置とアプリケーション事例紹介  メトラー・トレド 大木浩
11:20~11:40 熱量測定による溶解性・濡れ性評価の基礎と応用  ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン 麻見安雄
11:40~12:00 ナノスケール局所熱分析技術の応用例の紹介と今後の展開  日本サーマル・コンサルティング 江尻ひとみ
12:00~12:20 マイクロカロリメトリー測定を成功させるためには?-意識しよう!サンプルの溶液中の構造と活性  スペクトリス マルバーン事業部 廣瀬雅子
12:20~13:30 昼食
13:30~15:30 実習1(56号館4階403室)
高分子の熱分析(吉田)
 高分子の融解、結晶化、ガラス転移の測定を通じて、講義で学んだ内容を再確認する。熱履歴の異なる高分子の融解、結晶化、ガラス転移がどのように観察されるかを、データ解析をしながら学び、これらの熱データからどのような情報が得られるかを考える。
低分子医薬の熱分析(川上)
 アセトアミノフェン等の医薬品化合物を用い、融解、結晶化、結晶転移、ガラス転移、脱水和等を実際に測定することによって、講義で学んだ内容を再確認する。またそれを通じて、どのようにプログラムを組めばいいのか、どのようにデータ解析を行えばいいのか、解説を行う。
ITC(内山)
 モノクローナル抗体とその抗原を用い、蛋白質間相互作用の測定を行う。試料調製のコツ、測定の際の各種パラメータ設定における注意点、測定データ解析の方法について説明する。また、蛋白質と低分子化合物の相互作用の際に留意が必要な点についても適宜説明する。
Flash DSC(メトラー)
 超高速DSCを用いたポリマー挙動の測定:最大毎分240000℃温度変化を可能にするFlash DSCによって今まで測定の難しかったポリマーの挙動を測定することが可能になる。実際の測定を行い、得られた結果からポリマーの挙動をどのようにとらえればよいのかを紹介する。
15:30~17:30 実習2(56号館4階403室)
高分子の熱分析(吉田)
低分子医薬の熱分析(川上)
ITC(内山)
ナノTA(サーマルコンサルティング)
 ナノTAはサーマルプローブの先端を加熱することにより、試料表面の局所(極微小領域)における熱特性(ガラス転移、軟化温度、融解温度、膨張傾向)を測定する熱分析法である。実際に測定をしながら、測定における注意点やデータ解析の仕方、さらに、この装置で可能な他の測定手法等も併せて、どのような情報が得られるかを説明する。
17:30~ サンプル測定事前打ち合わせ、測定開始(必要に応じて)

3月10日(金) 持ち込みサンプル測定
時間 DSC1 DSC2 DSC3 DSC4 TG ITC1 ITC2 Flash DSC Nano-TA