Netsu Sokutei, 28 (1), p. 29, (2001)

解説

Frontiers of Solid-Gas Interaction Research As Extended by Application of Atmosphere-Controlled High Temperature Mass Spectrometer and High Temperature Kelvin Prove

高温質量分析計のクヌーセンセルの底部中央に小孔を穿ち,そこに白金細管を溶接し,毛細管を介して外部ガス貯めに結合させることにより,固体-気体反応を直接的に観測しうる実験体系を作製した。この言わゆる雰囲気制御型高温質量分析計(ACHTMS)の性能を詳細に調べ,クヌーセンセル内ガス圧に及ぼすガス分子量/原子量,セル温度等の影響を明確にした。本システムを用いることにより,核融合炉ブランケット増殖材,Li2O,Li4SiO4,Li2TiO3,Li2ZrO3,LiAlO2について,スイープガス中の添加水素によるリチウム蒸発損失増加量を評価し,特にLi4SiO4やLi2ZrO3では,雰囲気の酸素ポテンシャルにより蒸気圧が強く影響されることを明らかにするなどの成果を挙げた。さらに,強い放射性能を持つ核分裂生成物(FP)であるCs,Sr,BaとUO2との各複合酸化物からのこれらFPの蒸発に対する水蒸気/水素添加効果を測定し,軽水型原子炉の事故時におけるこれらFPの蒸発挙動について化学種毎に特異性を有するなどを明らかにし過酷事故解析に寄与した。また,高温ケルビン計による仕事関数測定から,固体の雰囲気ガスとの相互作用,特に欠陥生成消滅,ガス吸脱着などをその場的に観測しうることを明らかにした。特に,安定化ZrO2,Li4SiO4,Li2ZrO3などでは酸素空孔生成に基づく仕事関数の低下が,またLi2TiO3などではガスの吸着による仕事関数の低下が観測されること,さらにそれらは時定数の違いから明瞭に識別しうることなどを見出した。本手法により求まるミクロな挙動と,ACHTMSにより求まるマクロな挙動を結び合わせることにより,固体-気体反応の本質に迫る新たな解明が可能になるものと期待される。
This study has reviewed (i) improvement of performance of atmosphere-controlled high temperature mass spectrometer (ACHTMS), (ii) application of ACHTMS to studies of high temperature solid-gas reactions of oxide ceramics, and (iii) application of high temperature Kelvin probe (HTKP) to solid-gas interactions on oxide ceramics.