会長挨拶

 日本熱測定学会の会長を務めさせていただいております城所俊一でございます。本学会に興味をお持ち頂き、ありがとうございます。学会を代表してお礼とご挨拶を申し上げます。
 日本の熱測定は本多幸太郎先生が熱天秤(熱重量分析)を1916年開発し、学問的にも産業的にもその有用性を示されました。その後小澤丈夫先生がこの熱分析装置を使って反応を解析できる速度論式を誘導され、現在市販の熱分析装置に組み込まれるなど重要な役割を果たしております。
 1965年に第1回熱測定討論会を開催し、世界に先駆けて熱測定の重要性と課題について知恵を出し合って討論すること、その成果を広く役立てていただくことを始めました。熱測定によって観測される物理量は吸発熱量や比熱容量の精密測定をはじめとして、溶液中の分子間相互作用、物質の純度、高分子材料評価、弾性率の温度依存性、医薬品の安定性、結晶化速度、有機物の分解過程、グリーン・マテリアルの特性解析、建材適合性、タンパク質などを含む生物関連物質、細胞増殖、バイオアベイラビリティ、土壌解析、環境解析など、基礎から応用まで、単純な物質から複雑な生体などの分野までを含んでおります。それらの研究に必要な装置および測定法の開発も重視され、個々の研究室で開発された特殊な測定器から市販装置まで、幅広く研究対象に含まれております。
 このように広い領域にわたる大学等の研究者や企業の技術者が、1つの学会を構成して互いに協力し議論をしているのは、極低温から超高温までの温度依存性を中心とした実験技術と、熱力学や速度論を基本とした現象の理解を、共通の基盤としているためです。この共通性に立って広範な領域の専門家が議論をすることは、研究・開発の大きな助けとなります。本学会はそのような機会を提供する、特徴ある学会であると自負しています。皆様の研究・開発に本学会の特徴を活かして頂けるのであれば、是非ご入会いただき、協力と議論にご参加ください。 毎年秋に開催している熱測定討論会がそのための最も大きな機会で既に51回の歴史があります。この他、ワークショップ、講演会、グループ活動などの、より専門的な活動の機会もあります。全会員に配布される会誌には、研究報告、各分野の専門家による解説、集会レポートなどが掲載され、様々な知識に触れることができます。また、IUPAC (International Union of Pure and AppliedChemistry)、IACT(International Association of Chemical Thermodynamics)、ICTAC(International Confederation for Thermal Analysis and Calorimetry )をはじめとする、国際的な研究会の日本開催をはじめとして国際的活動も盛んであり、それらの組織の運営についても本学会会員が重要な役割を担っています。
 これから熱測定分野の実験・研究を始めようとされる方々のためには、初心者向けの講習会を行っていますので専門家への手がかりとしてご利用ください。ホームページ上にご案内があります。既に実験・研究を始められている方々を対象とした、進んだレベルの講習会も行っています。本学会では、入門者から世界の第一線の研究者まで、熱測定を用いた研究・開発に携わる全ての会員が、それぞれ重要性をもったメンバーであると考えています。このページをお読み頂いた方も、ご入会頂き、本学会をご自身の活動に役立てて頂きますようお勧め申し上げます。

平成27年10月 日本熱測定学会長 城所俊一
(長岡技術科学大学大学院 生物機能工学専攻)