露出表面積 (accessible surface area)
蛋白質を構成するアミノ酸残基の側鎖には,疎水性,親水性,解離性のものがあり,蛋白質分子の表面は,主に親水性,解離性のアミノ酸側鎖が,内部には主として疎水性のアミノ酸残基が集まっている。変性に伴い内部に存在する残基が溶媒に露出するようになる。天然状態の構造は,X線結晶解析のデータを用いて,変性状態ではほとんどすべての側鎖が溶媒と接している構造であるとして,各蛋白質の溶媒露出表面積を算出する。通常,水分子を仮想した,半径1.4Åの球を蛋白質表面に転がし,球の中心の軌跡の占める面積を計算する。重要な熱力学的パラメーターのひとつである天然状態と変性状態の熱容量の差(ΔCp )は,熱測定によって実測される。数多くの球状蛋白質において,ΔCp は,溶媒露出表面積と良い相関が見出されている。ΔCp から,蛋白質分子が天然状態から変性状態に構造転移することに伴う自由エネルギー,エンタルピー,エントロピー変化が求まるので,変性に伴う溶媒露出表面積は,蛋白質分子の熱力学的安定性を考察するうえで極めて有用な情報となる。
(大阪大学蛋白研 笹原健二)
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