Netsu Sokutei, 34 (1), p. 2, (2007)

特集によせて

会員の皆様には御承知の通り,2004年10月13日開催の第31回通常総会において日本熱測定学会表彰規定および学会賞等選考委員会規定が制定されました。その規則に則り,直ちに会長により会長経験者5名(小澤丈夫,高橋洋一,村上幸夫,徂徠道夫,八田一郎氏)に対して選考委員の委嘱があり,選考委員会が発足しました。選考委員会は村上選考委員長のもとに学会賞・奨励賞の候補者募集要領を決定し,会誌Vol.32, No.1の会告記事として掲載しました。残念ながら初年度(2005年度)は該当者なしとの結論でした。2年度目に入り,選考委員会には高橋洋一委員に代わり阿竹 徹氏が委嘱されました。村上選考委員長の下で候補者募集要領について再度慎重に検討し,基本的に初年度の考えを踏襲して進めることとしました。募集要領は選考方針が反映されますので,以下に再録します。 ・・・省みますと,本学会は「切磋琢磨に徹し,序列を作らない。」ことを創立の精神としました。それを善き伝統として引き継いできたことが功を奏し,世界に類を見ない会員数を擁し,世界に誇れる実力をもった学会に成長し今日に至っています。しかしながら,表彰制度を設け顕彰する学協会が急増していることや,本学会員が国の内外で受賞される機会が増えた今日の時代背景を考慮して, 熱測定分野の一層の発展を期するために,本表彰制度が制定されました。本選考委員会は学会賞および奨励賞の選考基準をあらかじめ作成するため,種々議論し審議を重ねました。その結果,討論会創設時からの諸先輩のご活躍を,40余年の歳月を遡って評価するのはとてもむつかしいことなので,学会賞は「おおむね過去10年間の,熱測定分野における学術研究,技術開発の顕著な貢献」に絞ることにしました。・・・ このような考えのもとに,学会表彰規定第8条により選考委員会委嘱の推薦委員,会員による他薦,また会員の自薦による募集を行いました。締め切り日までに届いた応募書類について,直ちに選考委員全員により精査し,慎重に審査しました。最終的に事務局において選考委員会を開催し,厳正に検討した結果,学会賞 2名,奨励賞 2名を選考しました。 選考理由は会誌Vol.33, No.4の会告記事として掲載しましたが,学会賞については,カナダのThe Univ. of British Columbiaで長年にわたって液体の熱測定に基づく独自の熱力学的研究を切り開かれた古賀精方氏,化学熱力学データベースMALTの構築と普及を成し遂げられた横川晴美,山内 繁,松本隆史氏を日本熱測定学会として顕彰に値するものと判断しました。奨励賞については,機能性ペロブスカイト関連酸化物における構造と物性の相関を明らかにする視点から,熱測定を駆使して極めて優れた成果を挙げられた京免 徹氏,生体分子間相互作用の熱力学解析により生命科学分野において顕著な功績を挙げられた織田昌幸氏を,将来が大いに期待できる若手研究者として表彰に値するものと判断しました。 第42回熱測定討論会における各氏の受賞講演は,期待に違わず素晴らしいもので深い感銘を受けるものでありました。その内容が本特集の解説記事として広く全会員の皆様にお読みいただけますことは喜ばしいことであります。この制度が熱測定分野の一層の発展に役立つことを願ってやみません。