熱測定ウェビナー2020

2020年10月26日(月)
熱測定チュートリアル
「熱測定の概要」産業技術総合研究所 阿部陽香先生
熱量測定・熱分析は、様々な物質・材料の熱的性質を検出するために、簡便な手法から精密測定まで幅広い技術に対応できる有用な測定法である。近年では、各種熱量計による精密測定の重要性や熱分析機器の汎用性が高まっており、関連する研究分野も多岐にわたる。本講では、主に熱測定初学者を対象に、熱測定全般についての概要を紹介する。
「DTA・DSCの校正とJIS」産業技術総合研究所 清水由隆 先生
DTAやDSCといった熱分析において、装置の校正は測定の信頼性を確保するために欠かせないものである。本講演では、DTA・DSCにおいて装置の校正が必要な理由や校正時の留意点などを説明する。さらに、精確な測定を行うために留意すべき点やDTA・DSCが関係する日本産業規格(JIS)、一般供給されているDSC校正用標準物質についても簡単に紹介する。
「現場での熱測定とその解釈 -熱分析を有効活用するために―」 株式会社パーキンエルマージャパン 鈴木 俊之 先生
様々な応用法が記載された参考書,JIS規格など参考にすべき文献が多い熱分析は,手順に従って得た結果であっても十分な再現性が得られないことが多く,熱分析を扱う現場では,この再現性のない結果の解釈に時間を費やす.ここでは,熱分析を扱って間もない学生・研究者や,結果を導くことに期間短縮が要求される企業の担当者や研究者に向け,DSC, TGのエラー事例を示しながら,試料調製から解析まで実践的な熱分析の手順を紹介する.
「等温滴定型熱量計ITCによる解析でわかることは何か」 東京理科大学 鳥越秀峰 先生
等温滴定型熱量計ITCは、分子間結合時に生じる熱量を直接測定することにより、分子間結合の結合比、結合定数、結合時のギブス自由エネルギー変化、エンタルピー変化、エントロピー変化を決定する装置である。これらの全てのパラメーターをただ1回の測定で決定できる有用な方法である。他の方法で解析することが困難である、分子間結合の結合比や、低分子量の分子の結合時の上記のパラメーターなどを、正確に簡便に決定できることが特徴である。
熱測定基礎講座
「溶液の熱科学へのいざない」 近畿大学 木村隆良 先生
自然現象の理解にはNewton力学から始まり熱力学、統計力学、量子力学が使われている。19世紀から熱力学的方法によりvan’t Hoff や Ostwaldらが溶液の理論的取扱を体系づけた。熱力学は必要十分条件でモデルを必要としないマクロな物理量であり、精度が上がる毎にミクロな状態を反映することになる。さらにMD,MOなどの進歩と共に、熱力学的性質は固体と気体の間の複雑な分子の集合状態である溶液状態を解明するため活用されている。
ここでは非電解質溶液の熱力学方法の高精度の測定とミクロな分子状態へのアプローチについて紹介する。
「高分子の熱分析」 元東京都立大学 吉田博久 先生
高分子の熱分析データを理解するために、準安定な結晶と非平衡状態であるガラスや平衡状態の過冷却液体の熱的な特性を解説する。高分子の特徴(主鎖の化学構造による分類、コンフィグレーションとコンホメーション)、融解(準安定結晶の加熱過程での熱挙動、平衡融点と混合状態評価)、ガラス転移とエンタルピー緩和、熱分解(主鎖の化学構造と熱安定性、リサイクル特性評価)について説明する。
熱測定応用講座
「DSC測定とin-situ X 線測定の融合 による高分子材料の融解挙動解析」 群馬大学 上原宏樹 先生
高分子材料の熱分析手法として最も一般的な示差走査型熱量計(DSC)測定においては、しばしば多重ピークが観察される。その場合、各ピークの帰属が問題となるが、融点や結晶化度の情報のみでは解釈を誤る可能性がある。これを補完してくれるのが、昇温過程での構造変化を直接的に分析する「in-situ(その場)」X線計測である。本講演は、X線プロファイル変化とDSC測定結果とを比較することで、多重融解ピークの原因を解明することを試みた例について紹介する。
「熱分析による相転移次数・気相との相互作用の解析法―セラミックスを例として」 日本大学 橋本拓也 先生
熱分析による相転移解析は,一次相転移を対象とするものが殆どであったが,最近では測定条件に配慮により二次相転移も観測可能になってきた。また気体と固体の相互作用の解明に熱分析は有効であるが,気体成分・濃度・分圧の制御・測定方法のノウハウはあまり知られていない。本講義では、相転移次数および気相との相互作用を熱分析で解析しようとする場合の実験上の注意点を、酸化物セラミックス材料を中心に講演する。