熱測定チュートリアル
「熱測定の概要」産業技術総合研究所 阿部陽香先生
熱量測定・熱分析は、様々な物質・材料の熱的性質を検出するために、簡便な手法から精密測定まで幅広い技術に対応できる有用な測定法である。近年では、各種熱量計による精密測定の重要性や熱分析機器の汎用性が高まっており、関連する研究分野も多岐にわたる。本講では、主に熱測定初学者を対象に、熱測定全般についての概要を紹介する。
「DTA・DSCの校正とJIS」産業技術総合研究所 清水由隆 先生
DTAやDSCといった熱分析において、装置の校正は測定の信頼性を確保するために欠かせないものである。本講演では、DTA・DSCにおいて装置の校正が必要な理由や校正時の留意点などを説明する。さらに、精確な測定を行うために留意すべき点やDTA・DSCが関係する日本産業規格(JIS)、一般供給されているDSC校正用標準物質についても簡単に紹介する。
「現場での熱測定とその解釈 -熱分析を有効活用するために―」 株式会社パーキンエルマージャパン 鈴木 俊之 先生
様々な応用法が記載された参考書,JIS規格など参考にすべき文献が多い熱分析は,手順に従って得た結果であっても十分な再現性が得られないことが多く,熱分析を扱う現場では,この再現性のない結果の解釈に時間を費やす.ここでは,熱分析を扱って間もない学生・研究者や,結果を導くことに期間短縮が要求される企業の担当者や研究者に向け,DSC, TGのエラー事例を示しながら,試料調製から解析まで実践的な熱分析の手順を紹介する.
「等温滴定型熱量計ITCによる解析でわかることは何か」 東京理科大学 鳥越秀峰 先生
等温滴定型熱量計ITCは、分子間結合時に生じる熱量を直接測定することにより、分子間結合の結合比、結合定数、結合時のギブス自由エネルギー変化、エンタルピー変化、エントロピー変化を決定する装置である。これらの全てのパラメーターをただ1回の測定で決定できる有用な方法である。他の方法で解析することが困難である、分子間結合の結合比や、低分子量の分子の結合時の上記のパラメーターなどを、正確に簡便に決定できることが特徴である。